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 わりと寝つきのいいほうなのだがごくたまに眠れない夜が続くことがあって、よく言われるようにそういうときに羊を数えるひとが本当にいるのかどうかは知らないけれど、というかまあそんなひとはあまりいないと思うのだけど、私はというと頭の中でしりとりをすることにしている。とはいっても、いい歳をしてあほみたいにベッドの中で、ええと、しりとり→りんご→ごりら→らっぱ→ぱんだ→だっくすふんど、などと延延とやっていても何だか哀しくなって涙が出てくるだけに決まっているし、第一つまらなさすぎてまったく眠くなんかならないので(面白すぎても困るんだけど、過度の退屈は安眠の敵である)、だから少し工夫をすることになる。つまり、あまりにも単純すぎるゲームであるしりとりに刺激を加えるためテーマを設定して、しりとりワードに何らかの制限をつけるのだけど、とはいっても、このテーマを決めるのがけっこうやっかいで、安易に考えるとしりとりは困難を極めることになるので注意が必要である。
 たとえばのんきに「くだもの」というテーマでしりとりを始めたとすると、ええと、しりとり→りんご→ご、ご、ご? ええと、ご、ご、ご、とベッドの中でひとり孤独に「ご」で始まる名前のくだものをもんもんと捜索しながら「ご、ご」と小さく呟き続ける羽目に陥り、一時間ののちにやっとのことで「ごーるでんきうい」を思いつき、そののちに「いちじく」と手を進めてみたはいいものの意外にも次の「く」で苦戦、寝返りを打ちながら無い知恵を絞りやっとのことで思いついたのは「くこ」「くり」「くるみ」ときわめて微妙、果たしてそれらをくだもののカテゴリに入れていいものかと陽が昇るまで検討した結果その朝はとうぜん寝坊、寝不足なのでろくな仕事もできずわずかばかりに残っていた信用も失墜、そんなこんなで路頭に迷いホームレス、そのまま失意のうちにその一生を終える、などということが起きないとは誰にも断言できないのであって、つまり深夜のひとりしりとりのテーマというのもなかなか侮れない問題なのである。
 ある眠れない夜、私は「女性芸能人」というテーマでしりとりをした。こんな感じだった。ええと、しりとり→りんか→かがまりこ→こいずみきょうこ→こばやしさちこ→こいけえいこ→こやなぎるみこ→こんのみさこ→こみやえつこ→こうだしゃーみん(終)。
「○○子」の呪縛。
 ふつうのしりとりでは「る」で始まる言葉が少ないためそれが戦略上重要になるけれど、何らかの制限を入れたしりとりの場合、こういった別の事情が出てくることもある。で、どうするかというと、翌日は寝る前にグーグルで検索して、あらかじめ鍵となる言葉――この場合は女性芸能人の「こ」で始まる名前――を仕入れてからベッドに入ることになるのだが、さすがにわれながらあほであると言わざるを得ない。
 ところが、このあいだ岸本佐知子の『気になる部分』というエッセイ集を読んでいたら、まったく同じことが書いてあって死ぬほどびっくりした。岸本さんも私と同じように眠れないときにひとりしりとりをするらしく、やはり昼間のうちにそれ用の言葉を調べておくということで、こんなことをしているのは世界中で私ひとりだと確信していたので単純に驚いたのだけど、というか、岸本さんのほうが私なんかよりもずっと徹底していて、ひとりしりとりの深い闇の部分(おおげさだけど)、そのどろどろとした裏側(そんなものがあるとして)まで踏みこんでいて、私は何だか負けた気分になってしまったのだった。
 アメリカの小説家に私の心のツボを直球ど真ん中ストライクで打つニコルソン・ベイカーというひとがいて、岸本さんはそのベイカーの小説の翻訳をしている。最初にベイカーの『中二階』を読んだのがいつだったかはもう忘れてしまったけれど、そのあまりの面白さにとてつもなくびっくりしたのを憶えている。で、嬉しがって次に読んだ『もしもし』にも私はやっぱり同じようにびっくりして、それから『室温』を読んでまたびっくりして、そのびっくりは『フェルマータ』『ノリーのおわらない物語』と続くことになり、すべて岸本訳である。
 というわけで岸本佐知子という名前が頭の片隅に残っていたのだけど、たまたま本屋で彼女のエッセイ集を見つけて電車での暇つぶしにと思って買って読んでみたら、上に書いたような理由で再びびっくりした。って何だかびっくりしかしていないみたいだけど、いちおう付け加えておくと電車の中で読みながらひとりにやにやもした。
 そんな『気になる部分』には、「ひとりしりとりの話」以外にも「おでん屋で邪険にされる話」「完全無欠にかわいい小動物を潰す話」「トラックのうしろのビラビラの話」など、びっくりするほど楽しいお話が満載でとてもおすすめです。ほんとに面白いから、機会があったら読んでみて。
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2006.02.01.Wed 00:00 | 未分類 | trackback(0) | comment(0)
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